北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

東京地検特捜部長・森本宏くんに贈るエール「闇の不正と闘う」

(司法研修所時代,クラスメートだった森本くんへ)

「闇の不正」と闘いなはれ!!

「法律家を目指す皆さんはお分かりでしょうが,実社会は学校の教科書に出てくるような表の世界ばかりではありません。新聞等で報道されるとおり,その裏面には,特別背任や業務上横領,贈収賄,インサイダー取引,大規模な脱税など悪質な犯罪が少なからず見受けられます。皆さんはもちろんのこと,毎日朝早くから夜遅くまでひたすら真面目に仕事をしている一般の人々は,このような報道を見る度に憤慨しておられることと思います。

 しかし,実際に社会の陰で進行している腐蝕は,決して報道されるところにとどまるものではありません。悪質な事案であるにもかかわらず法の網の目をかいくぐるようにして行われているためなかなか刑事事件としては立件されないものや巧妙な隠蔽工作が行われているためそもそも捜査機関に探知さえされないものなど闇の部分の広がりは想像以上のものがあります。捜査機関に知られることのないまま,あるいは刑事訴追の手続を取られることのないまま,巨額の利権をめぐって魑魅魍魎とも言うべき人たちが暗躍し社会を蝕み続けているようなのです。このような腐蝕は公正であるべき社会の根幹に歪みを及ぼし,やがてはその土台を揺るがすまで至るかもしれません。

 (検察庁)特別捜査部の役割は,社会の公正を確保するため,その闇の部分に光りを当て腐蝕を切除することにあります。もちろん,腐蝕に巣くう人たちは狡猾であり,簡単に摘発されるような愚かな真似はしていません。捜査機関に手掛かりをつかまれないように,二重三重に防御手段を講じ,関係法令も十分検討し,処罰法規をすり抜けるようにした上で動いているのが常であり,この闇を暴き出して刑事訴追に持ち込むのは至難の連続です。

 このような困難を打開して捜査を進めるのは,悪いことを悪いと感じることのできる素朴な正義感と,実直に生活している人々の生活と利益を守ることに対する熱意法律適用を多角的に検討し駆使する能力です。「捜査してみても証拠が得られるかどうかわからない」とか(専門的な言い回しになりますが)「事件の筋が悪い」とか,「法令の趣旨からは違法であろうが,判例がないのでどのようにしたものか」などの理由で摘発を躊躇しがちにもなるのですが,しかし,そもそも腐蝕に利益を貪ろうという人たちは摘発されないように巧妙な仕組みを作っているのですから,多少の困難を前にして捜査をあきらめたのでは彼らの思うつぼ  です。額に汗して働いている人々や働こうにもリストラされて職を失っている人たち,法令を遵守して経済活動行っている企業などが,出し抜かれ,不公正がまかり通る社会にしてはならないのです

 闇を覆っているものがどのような社会的勢力であろうと,どれほど困難な障害が立ちふさがっていようとも,ひるます,たじろがず,あきらめず,国民のために,社会のために,この闘いに一身を投げ打ってもよいという検察官と検察事務官の団結によってのみ難局を打開して進むことができます。」

 

 元東京地検特捜部長 大鶴基成弁護士のお言葉でした。

 

 

<出典>